1996年に東芝が発売した世界初の据え置き型DVDプレーヤー「SD-3000」が、世界初のDVD用MPEG-2デコーダーLSI「TC81201F」とともに、国立科学博物館が選定する令和2年度の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されました。
登録理由は、「SD-3000」が世界初の家庭用DVDプレーヤーであることと、「SD-3000」が「TC81201F」を搭載していることによるものです。
DVDは2000年代に非常に普及し、現在はさらなる高画質なBD、さらには4K画質のUHD BDにとって代わられていますが、現在でもレンタルビデオ店では普通に置いてあり、まだまだしぶとく存在感を放っています。
DVDはCDと同じ12cmディスクを利用した映像メディアとして世界で初めて普及したという点でもエポックメイキングな存在であり、同じサイズのBD、UHD BDへの流れを作った働きも大きいものです。
個人的にはDVDこそが、CDを大きく上回る規格のデジタルオーディオを記録できる最初のメディアとして歴史に残る存在だと思います。
なにしろ、1996年当時にはたいへんなハイスペックである24bit/96kHzのリニアPCM音声を規格上は記録・再生できたのです。当時はハイレゾなどという言葉はありませんでした(ハイビット・ハイサンプリングなどと言っていましたっけ)が、現在でも立派にハイレゾとして通用するレベルです。
残念なのは、器はできたのですが、DVDを利用しての「ハイレゾ」オーディオは普及しませんでした(DVDをオーディオ用専用に利用するDVDオーディオも失敗)。
「SD-3000」に搭載されているDACの能力は20bit/48kHz止まりのようです。DVD黎明期には24bit/96kHzに対応するDACチップはまだ載せられていなかったのです。
さて、たしかに「SD-3000」は世界初のDVDプレーヤーとして発売されたことは覚えています。オーディオ機器とは異なり、現在は実用性のある中古機器としてはほとんど無価値でしょう。実際、いま、「東芝 SD-3000」と検索しても、東芝のオーブンレンジ!のER-SD3000なる機器が上位にヒットするばかり。
こうやって「未来技術遺産」になれば、コレクション用途に中古機器としての価値が上がるものでしょうか?
東芝のDVDプレーヤーの生産完了品で、中古市場でいまでも注目したいモデルとしては、2001年ごろ発売されたSD-9500があります。
非常にオーディオ再生機能に注力しており、さらに、24bit/96kHz対応のデジタル入力を搭載しているため、現在でもハイレゾ対応の単体DACとして使えます。かなりの物量を投入したモデルであり、少なくとも24bit/96kHz対応のDACとしては、現在の数万円程度までのモデルよりも本質的な音質は上回っているものと思われます。