「春のヘッドフォン祭2020 ONLINE」で発表され、5月末から6月の発売を目指しているとしていた、SHANLINGブランドのDAP新モデル「M6 Pro」。6月中旬に全国発売されることが決定。オープン価格で税込86,900円前後での実売が予想されます。なお、フジヤエービック限定で先行販売が行われ、5月15日から購入することが可能となっています。
従来モデル「M6」(2019年発売、実売5.6万円程度)の上位モデル。「M6」をベースにしながらも、音質に関わる内容を多数改良した高音質志向のモデルです。
「M6」と比較しての違いも交えながら「M6 Pro」の内容や特徴をご紹介します。
「M6」はShanling初となるAndroid搭載オーディオプレーヤーで、Google Playも利用可能な汎用性の高いDAPでした。また、標準で2.5/3.5/4.4mm接続に対応するイヤホン・ヘッドホンのバランス接続への対応度の広さも魅力。
以上の「M6」同様の基本を中心に、「M6 Pro」は機能面や装備などにおいては「M6」に準じた内容となっています。
CPUはQualcommのSnapdragon430、メモリは4GB、内蔵のストレージは32GBで、microSDカード(最大2TB)も利用可能。
なお、「M6 Pro」の初期状態でのAndroidバージョンは「M6」と同じ7.1ですが、今後9.0にアップデートされる予定とされています。
PCMは768kHz/32bitまで、DSDは11.2MHzまでのネイティブ再生をサポート。ただし、「M6」では11.2MHZのDSDは変換再生を行なっていましたから再生スペックはアップしています。再生対応フォーマットはDSF/DFF、DXD、APE、FLAC、WAV、AIFF/AIF、MP3、WMA、AAC、OGG、ALAC(Apple Lossless)など。
独自のAGLO(Android Global Lossless Output)を採用することで、Android SRCの制限を受けずに各種音源データを無劣化で伝送・変換できるのも従来どおり。Amazon Music HDにもビットパーフェクトで対応できます。また、5種類のデジタルフィルターも利用でき、10バンドイコライザーも搭載。
Bluetooth 4.2対応で再生データの送受信対応。コーデックはLDAC/SBCの送受信や、HWA/aptX HD/aptXの送信に対応。Wi-Fiは2.4GHz/5GHzのデュアルバンド対応。Wi-Fi経由でオンラインアップデートやデータ転送も可能。
ここまでは「M6」でも同様の内容です。
「M6 Pro」と「M6」を比較してのおもな違いはDACチップの変更とアンプ回路の刷新による高音質化です。
M6では旭化成エレクトロニクス製DACチップ「AK4495SEQ」をデュアル構成でしたが、M6 Proではより上位のチップの「AK4497EQ」をデュアルで採用。また、シングルエンド再生時のデュアルDACモードが追加され、バランス接続時だけでなく、アンバランス接続時にも従来以上の高音質で楽しめるようになりました。
チップ変更と合わせ、アンプ回路も刷新していることによるイヤホン・ヘッドホン使用時の音質向上が見込めます。
アンプ回路はフルバランス構成。オペアンプには、アナログ・デバイセズ社製「ADA4610-2」を採用。また、ローパスフィルターは回路を再設計。クロックにはKDS製の低位相ノイズ水晶発振器を搭載するほか、各パーツも高品位品に替えるなどにより、全体的な高音質化を図っています。
「M6 Pro」のアンプ出力はシングルエンドで最大200mW@32Ω(「M6」は160mW)、バランス接続で最大600mW@32Ω(「M6」は250mW)と確実に向上。また、ゲインスイッチはM6では二段階だったのに対し、Super Highを加えた三段階に増加。DAPでは鳴らしにくい低能率ヘッドホンの駆動力が向上していることが期待されます。ホームユースのヘッドホンとの接続を想定した強力な電圧出力を意識したとメーカーも明らかにしていることからも、高級ヘッドホンユーザーにより適した上位モデルとなっているようです。
タッチ操作可能なディスプレイは4.7型/解像度720×1,280ドットのIPS液晶。4,000mAhのバッテリー容量も「M6」と同じですが、「M6 Pro」の連続再生はシングルエンドで13時間、バランスで8時間。「M6」ではシングルエンドで12時間、バランスで9時間でしたから、1時間ずつ減少しています。これはアンプ部の強化とのバーターとも言えますが、大きくは短くなっていないのは評価できると思います。充電ポートはUSB-C。QC3.0にも対応。
「M6 Pro」の外形寸法は133.5×71×17.5mm(縦×横×厚さ)、重量は244g。「M6」の外形寸法は133.5×71×17.5mm(縦×横×厚さ)、重量は228gとサイズは全く同じで、「M6 Pro」がわずかに重くなっている程度の違いです。
サイズは同じながらも、「M6 Pro」外観は筐体をチタンのような深いシルバーカラーに変更、背面仕上げもサンドブラスト・アンチグレア加工を施した「マットガラス背面パネル」と異なっており、別モデルであることをアピールしています。また、本体上部は左右のエッジ部を対称としたデザインとなっています。
一般的には「M6」でも十分な機能と音質を備えているように思えますが、それ以上を求めるユーザーに向けた製品です。機能やスペックで選ぶのであれば、「M6」で十分でしょうし、もっと安価なDAPでも良いでしょう。
なお、「M6」「M6 Pro」を選ぶ機能面でのポイントは、Google Play利用可能なAndroid DAPであり、各ストリーミングサービス音声をハイレゾも含めてビットパーフェクト再生できること、追加モジュールなどを買わなくともイヤホン・ヘッドホンの2.5mm/4.4mmバランス接続に対応できること、あたりでしょう。
本機は、DAC変換/アナログ部と、ヘッドホンアンプ部の品位向上が価格上昇分の多くを占めており、「M6」以上の音質を求めるユーザーに向いています。
メーカーでは特に、ホームユースのヘッドホンでの使用時のクオリティーアップを図ったと明らかにしています。自宅や屋内で高級ヘッドホンで音楽を聴くことが多いユーザーに適しているようです。
海外での実機レポートでは、ポテンシャルは高いながらも低能率でハイインピーダンスと、DAP泣かせであるゼンハイザーのHD 650同等品のHD6XX(300Ω)を十分に駆動できたとしています。HD 650がうまく鳴るのであれば、たいていのダイナミック型ヘッドホンの著名モデルはカバーできそうです。
なお、屋外であれば、周囲に迷惑が掛からないような密閉型のヘッドホンと組み合わせればよいでしょう(DAP+SHANLING)。
(従来モデルの「M6」)