2020年の新年が明けたばかりですが、恒例のCESがアメリカのラスベガスで始まります。「CES(Consumer Electronics Show)は、白物、黒物を問わず、家電全般の新製品の世界的な展示会。日本のメーカーはもちろん、世界中のメーカーが参加しています。
当然、オーディオ・ビジュアル機器も対象。オーディオ製品はいわゆるピュア・オーディオ的な製品よりは、一般向けのゼネラルオーディオが中心となりますが。
そんななか、アメリカのシュアから、ついに、ブランド初の完全ワイヤレスイヤホンが登場しました。
カナル型イヤホンや、マルチBAイヤホンの草分け的存在であるシュアは、いわゆるシュア掛けの元祖でもあります。また、シュアのイヤホンは、プロ向けのモニター用も意識しているため、フラットで正確性の高いサウンド傾向も特徴です。また、高い遮音性という優れた特徴も忘れてはいけません。
このようなこだわりがあるだけに、これらを満たせるような形でないと、なかなか完全ワイヤレスイヤホンには手を出してこないようなイメージはありました。
果たして登場したAONIC 215は、やはり、シュアらしいこだわりを堅持したモデルのように感じます。
というのも、完全ワイヤレスイヤホンは小型化と長時間再生を第一に考えるのが普通です。ソニーのように、これらを多少犠牲にしても多機能化を目指す方向もありますが。
ところが、シュアは、あまり小型でもなく、長時間再生にもそれほどこだわりませんでした。一方、シュアの生命線ともいうべき、音質や遮音性の確保には力を入れたようです。
つまり、AONIC 215は、シュアのカナル型イヤホンの既存モデル的なフォルムのハウジングに、MMCX規格で接続する別筐体のBluetoothレシーバーとの2ピース構造を選択したのでした。
これにより、完全ワイヤレスイヤホンでは珍しい、シュア掛けも維持されるようになっています。
ほぼ従来の有線イヤホンのハウジングを使うことで、ハウジング内に機器や電池を入れることでの音質劣化を抑えることに成功しているようで、音質面での自信はかなりあるようです。見た目や型番からも、有線カナル型イヤホンのベーシックな名機・SE215をベースにしていることは間違いないでしょう。
シュアは以前から、イヤホンのケーブル断線トラブルを回避するために、MMCX規格でのケーブル着脱機構を採用。これが他社にも広まり、現在はイヤホン業界の標準規格になっていることはご存知の通りです。
今回もこの機構を活用。イヤホン本体の音質を維持しつつ、完全ワイヤレス化することに成功しています。ただし、これにより、ハウジング外に通常の完全ワイヤレスイヤホンでははみ出すことはないBluetoothレシーバー部がぶら下がるという、サイズ感や取り回し面では不利になる状況になっています。
連続再生時間は約8時間。付属のケースに入れて3回分の充電ができます。装着したままで周りの音を聴けるEnvironment Modeにも対応。いわゆる外音取り込み機能です。
MMCX規格(やその他)のイヤホン・リケーブル端子に接続して、既存の有線イヤホンを完全ワイヤレス化する方法は、シュアが初めてではなく、日本のFOSTEXや中国のTRNなどがすでに行っています。それによる既存の高品位イヤホンの完全ワイヤレス化のメリットと、サイズや取り回し面でのデメリットは、すでに完全ワイヤレスイヤホン愛好家の間では知られた話です。
それでも、イヤホン界の盟主の一角であるシュアが、この選択をしたことは、少なからず業界に影響を与えそうです。
次に注目したいのは、イヤホン界のもう一方の雄と言えるER・ETYMOTIC RESEARCH(エティモティックリサーチ)の動向です。
なお、AONIC 215のBluetoothレシーバー部は、単売も予定。このため、シュアをはじめ、幅広いMMCX規格採用の有線イヤホンを完全ワイヤレス化できるようになります。
はやくも、有線カナル型イヤホンの名機・SE846に付けて、これまでにないほど高音質な完全ワイヤレスイヤホンリスニングを楽しんでみたい、という話がネット上には上がってきています。
このような高音質イヤホンの素性を活かすには、Bluetoothレシーバー側も相応のDACやヘッドホンアンプ、また、高音質コーデックに対応している必要があるでしょうが、AONIC 215のBluetoothレシーバー部はどの程度の品位なのでしょうか。ここも気になります(完全ワイヤレスイヤホン+Shure)。
追記:2020年4月3日:4月3日からの国内発売が決定しました。オープン価格で税抜き実売価格は約3万円。詳細もわかりました。イヤホン部はSE215と全く同一であるとしています。「RMCE-TW1 完全ワイヤレス・セキュアフィット・アダプター」と呼ぶBluetoothレシーバー部は最大8時間の連続使用が可能で、充電ケースによる3回の追加フル充電も可能。
BluetoothはVer.5.0。コーデックはSBC/AAC/aptXに対応。スマホ用の専用無料アプリ「ShurePlus PLAY」で、パラメトリックEQと外音取り込みのレベルを設定することも可能。
イヤホン部のカラーはトランスルーセントブラック/クリアの2カラーと、トランスルーセントブルー/ホワイトのスペシャルエディション2カラーの全4色。Bluetoothレシーバー部のカラーは全てブラックです。
なお、Bluetoothワイヤレスモジュール単品の「RMCE-TW1」も近日発売予定。こちらは税抜24,800円前後での実場が予想されます。
さらに追記:2020年5月1日 どうやら初期不良が多発したようで、4月下旬から販売停止中で、すでに購入した人にも回収が行われているようです。不具合箇所の改善ののちに再発売されることを望みますが、状況が状況だけに予断を許しません。
(アマゾンの商品レビューに不具合の具体的な内容が多数書き込まれています。)
https://amzn.to/2KMuALs