ソニーは2023年1月11日に、ウォークマン新モデル「NW-ZX707」を発表しました。1月27日発売で税込みの実売価格は10.5万円程度。
従来モデル「NW-ZX500」シリーズ「NW-ZX507」の後継機。従来同様に4.4mmバランス接続用のヘッドホンジャックとフルデジタルアンプ「S-Master HX」を搭載。DSDネイティブ再生(最大11.2MHz)やリニアPCM(最大32bit/384kHz)のハイレゾ音源の再生に対応します。MQAやApple Losslessなどもサポート。
ZX500からストリーミング再生時のバッテリーの持ち時間を大幅に改善すると共に、現行最上位ウォークマン・WMシリーズのNW-WM1AM2の技術も多数投入し、さらなる高音質化を果たしたというミドルクラスモデル。
「NW-ZX707」のおもな内容・仕様は以下のとおりです。
OS:Android 12
SoC:Qualcomm QCS4290(Snapdragon 665同等性能 8コア、動作クロック300MHz – 2.02GHz)
ディスプレイ:5インチ液晶(1280×720・タッチパネル)
ストレージ:64GB(microSDカード対応)
通信機能:Wi-Fi a/b/g/n/ac、Bluetooth5.0
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、aptX、aptX HD
機能:USB DAC、S-Master HX、ハイレゾ、DSEE Ultimate、ソースダイレクト、ダイナミックノーマライザ、バイナルプロセッサ、DSDリマスタリングエンジン
USBポート:USB 3.2 Gen 1 Type-C
ヘッドホン出力:ステレオミニジャック50mW+50mW(ハイゲイン出力時)、
バランス標準ジャック230mW+230mW(ハイゲイン出力時)
駆動時間:約11時間~約25時間
フル充電までの時間:約3.5時間
サイズ・重量:132.3 x 72.5 x 16.9mm / 227g
カラバリ:ブラック
価格:105,000円前後
発売日:1月27日発売
OS:Android 9
SoC:ARM Cortex-A53 1.80Ghz(4コア、動作クロック1.20GHz – 1.80GHz)
ディスプレイ:3.6インチ液晶(1280×720・タッチパネル)
ストレージ:64GB(microSDカード対応)
通信機能:Wi-Fi a/b/g/n/ac、Bluetooth5.0
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、aptX、aptX HD
機能:S-Master HX、ハイレゾ、DSEE Ultimate(制約あり)、ソースダイレクト、ダイナミックノーマライザ、バイナルプロセッサ
USBポート:USB 2.0 Type-C
ヘッドホン出力:ステレオミニジャック50mW+50mW(ハイゲイン出力時)、
バランス標準ジャック200mW+200mW(ハイゲイン出力時)
駆動時間:約8.5時間~約20時間
フル充電までの時間:約6.5時間
サイズ・重量:122.6 x 57.9 x 14.8mm / 164g
カラバリ:ブラック
価格:88,000円前後(2023年現在の実売価格は6.5万円程度)
発売日:2019年11月発売
「NW-ZX707」の詳しい内容を「NW-ZX507」と比較しての違いを中心にご紹介。
「NW-ZX707」は従来の「NW-ZX507」よりもサイズ・重量ともにやや大きくなり、内容面では上位モデル「NW-WM1AM2」に搭載された技術や機能をできるだけ盛り込み、音質、機能面で向上させ、上位モデル「NW-WM1AM2」に近づけた高品位なミドルクラスDAPとなっています。
OSもより最新化、SoCもより高性能になり、Android端末としての機能性、動作の快適性もアップしています(AnTuTuベンチマークスコアは従来の10万未満程度から18.5万程度にアップ。ただ、最新スマホと比較するとかなり劣りますが音楽再生には十分です)。画面も大型化し、UIも刷新。フリックでの操作にも対応したほか、ジャケットの色に合わせて背景が変化するなど、より見やすく使いやすくなっています。
バッテリー持続時間は、W.ミュージックアプリ利用時で、ZX500の20時間から、ZX707では25時間にアップ。課題とされていたW.ミュージック以外のアプリ使用時の持続時間も大幅に改善したとしています。
バッテリー持続時間が向上したのはバッテリー容量を増やしたためではなく、SoCの変更のため。具体的には新しいSoC・Qualcomm QCS4290は従来のQualcomm QCS2290よりも、最小動作周波数が大幅に低く、周波数が低いときは電力消費も少ないためです。つまり、あまり電力を消費する必要がないときでも従来は無駄に消費していたためバッテリー持ちが悪かったということでもあります。
充電時間も短縮。また、バッテリーの寿命を延ばす「いたわり充電」も新搭載されています。
有線接続(バランス接続)時のバッテリー持続時間 | NW-ZX707 | NW-ZX507 |
MP3(128kbps) | 24時間 | 19時間 |
FLAC(24bit/96kHz) | 23時間 | 17時間 |
FLAC(24bit/192kHz) | 21時間 | 15時間 |
DSD(2.8MHz) | 21時間 | 9時間 |
Bluetooth接続時のバッテリー持続時間 | ||
MP3(128kbps) | 22時間 | 11時間 |
FLAC(24bit/96kHz) | 11時間 | 8.5時間 |
AI補正でハイレゾ相当の高音質化を実現する「DSEE Ultimate」を引き続き搭載。「NW-ZX507」では「DSEE Ultimate」は有線接続時とW.ミュージックアプリを使用しているときのみ有効にできるという制約がありましたが(それ以外は「DSEE HX」が適用されます)、「NW-ZX707」では有線・無線(LDAC接続時)問わず、アプリを問わずに「DSEE Ultimate」が使えるようになりました。
また、PCM音源を11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」を「NW-ZX707」ではZXシリーズで初めて搭載。
「NW-ZX507」では非対応だったUSB-DAC機能も新搭載。PCと接続して高音質を楽しめます。
音質に関わる部品についても上位モデル「NW-WM1AM2」から新たに導入することで「NW-ZX507」に差をつけています。
金色のアルミ削り出しパーツで高級感のあるデザインを演出。無酸素銅の切削ブロックも新投入。グラウンドの安定性を高め、音質を向上させるとしています。
コンデンサーには、独自開発し「NW-WM1AM2」でも使われた「FT CAP3」を使用。表現力向上や音場の拡大などが期待できます。「NW-WM1AM2」と同じサイズの大型コイルを、バランス出力のLCフィルターに採用。音の解像感を向上させるのに役立つとしています。金を含有させる事で、電気特性を向上させたリフローはんだを、接合部分に新採用。微細音の再現力を高めています。
電源部分も強化。大容量固体高分子コンデンサーを投入。ZX500よりも電源インピーダンスを従来比約1/10まで低減。
以上のように見てみると、「NW-ZX707」は、たしかに実売価格で「NW-ZX507」よりも何万円も高くなり、一見割高に見えますが、16万円程度する「NW-WM1AM2」にかなり迫る内容にアップグレードされていることや、機能面、使い勝手の向上など、かなりの別物に進化しています。「DSEE Ultimate」の汎用性の向上、「DSDリマスタリングエンジン」新搭載も大きいと思います。
「NW-WM1AM2」は欲しいけど高くて、という向きにも適している手ごろな高品位モデルという見方もできそうです。「NW-WM1AM2」のSoCも「NW-ZX507」と同じで非力なので、動作の快適性では「NW-WM1AM2」以上なのもメリットでしょう。
ただ、実売6.5万円程度でAndroid OSとバランス出力を装備したウォークマンが無くなるということでもあり、どうしてもこの価格と内容にこだわるのであれば「NW-ZX507」の在庫品や中古、あるいは中国メーカー製の実売6.5万円程度でAndroid OSとバランス出力を装備したDAP(SHANLING M3 Ultra、HiBy R5Gen2、iBasso Audio DX170)あたりから選ぶことになりそうです。
それでも、ウォークマン両機種には「DSEE Ultimate」や「バイナルプロセッサ」といった中華DAPには無い独自回路があること、なにより他社では採用のないデジタルアンプ(D級増幅)のヘッドホンアンプを採用しているという独自の価値もあります。
DAPの存在感が薄れている昨今ですが、やはりウォークマンの独自の価値は「NW-ZX707」にも「NW-ZX507」にも見出せるのではないでしょうか。