ソニーはミドルクラスウォークマン新モデル「NW-ZX707」を2023年1月27日に約10.5万円で発売。本機の内容と、レビュー・音質情報をお届けします。
「NW-ZX707」は従来モデル「NW-ZX500」シリーズ「NW-ZX507」(2019年発売・現在の実売価格約6万円)の上位に当たる後継機。従来同様にAndroid OSを搭載し、4.4mmバランス接続用のヘッドホンジャックとフルデジタルアンプ「S-Master HX」を搭載。DSDネイティブ再生(最大11.2MHz)やリニアPCM(最大32bit/384kHz)のハイレゾ音源の再生に対応。MQAやApple Losslessなどもサポートと、ハイレゾ再生機としての基本性能面では大きな変化はありません。
AI補正でハイレゾ相当の高音質化を実現する「DSEE Ultimate」を引き続き搭載していますが、「NW-ZX507」では「DSEE Ultimate」は有線接続時とW.ミュージックアプリを使用しているときのみ有効にできるという制約がありましたが、「NW-ZX707」では有線・無線(LDAC接続時)問わず、アプリを問わずに使えるようになりました。
また、PCM音源を11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」を「NW-ZX707」ではZXシリーズで初めて搭載しました。
NW-ZX500からストリーミング再生時のバッテリーの持ち時間を大幅に改善すると共に、現行最上位ウォークマン・WMシリーズのNW-WM1AM2(2019年発売・現在の実売価格約16万円)の技術も多数投入し、さらなる高音質化を果たしています。Android端末としての快適性を大きく左右するSoCもNW-ZX500はもちろん、上位のNW-WM1AM2 / NW-WM1ZM2よりも高性能なチップに変更しており、動作全体の向上も図られています。
「NW-ZX707」のおもな内容・仕様は以下のとおりです。
OS:Android 12
SoC:Qualcomm QCS4290(Snapdragon 665同等性能 8コア、動作クロック300MHz – 2.02GHz)
ディスプレイ:5インチ液晶(1280×720・タッチパネル)
ストレージ:64GB(microSDカード対応)
通信機能:Wi-Fi a/b/g/n/ac、Bluetooth5.0
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、aptX、aptX HD
機能:USB-DAC、S-Master HX、ハイレゾ、DSEE Ultimate、ソースダイレクト、ダイナミックノーマライザ、バイナルプロセッサ、DSDリマスタリングエンジン、
USBポート:USB 3.2 Gen 1 Type-C
ヘッドホン出力:ステレオミニジャック50mW+50mW(ハイゲイン出力時)、
バランス標準ジャック230mW+230mW(ハイゲイン出力時)
駆動時間:約11時間~約25時間
フル充電までの時間:約3.5時間
サイズ・重量:132.3 x 72.5 x 16.9mm / 227g
カラバリ:ブラック
価格:105,000円前後
発売日:1月27日発売
「NW-ZX707」の詳しい内容を「NW-ZX507」と比較しての違いを中心に紹介した記事も参考にしてみてください。
NW-ZX707の音質について、各種レビューから読み取れる傾向としては、もっとも肝心な音質については4.4mmバランスが上位のNW-WM1AM2に肉薄するレベルで、この点で価格を考えるとコスパが高い好モデル、と言えるようです。というのもソニーは本機のバランス回路に注力しており、NW-WM1AM2にできるだけ近づける設計を採っているのも効いているのでしょう。逆に言うと従来の3.5mmアンバランス接続ではNW-WM1AM2との差はそれなりにあるとも言えましょう。NW-ZX707を音質的なコスパで選ぼうというであれば、4.4mmバランス接続をメインに使う方により向いていそうです。
NW-ZX507との比較では全体的に音質は底上げされており、安心して選べるようです。
音質傾向については、ワイドレンジ感、音の情報量、低音の量・締まり、空間の広さなどは価格に見合った十分なものを備えているようです。そのうえで、サウンド傾向としてはやや明るくはっきりした鮮やかな方向のようで、NW-WM1AM2のほうがいわゆる色気、艶、厚み、楽器の奥行感といった項目で上回っているように感じるような印象です。
音楽ジャンル的にはクラシックやジャズといった生楽器の質感や表現の陰影感の追求よりは、現代的な電子楽器や打ち込みを多用したポップス・ロック系が適していると言われる方向性のようです。
Android端末でもあるだけに、気になる操作性や動作の快適性については、上位のNW-WM1AM2でも動作の緩慢さが指摘されているのからすれば、相当に改善し、音楽関係のアプリやストリーミングにおいては実用的なレベルに達しているようです。従来、Androidウォークマンが弱い領域だっただけに、これは大きな改善でしょう。NW-WM1AM2について、動作の緩慢さが気になって導入できなかった向きにもNW-ZX707ならば大丈夫のようです。
バッテリー持ちについても、待機時や動作が小さいときの消費電力を大幅に抑えられるクアルコムのSoCに変えたこともあり、文句なしのロングバッテリーとなっているようです。ソニーはもともと低消費電力のD級アンプを使い続けていますし、ロングバッテリーはウォークマンの代名詞でもあるのですが、今回のNW-ZX707ではうまく設計できたようです。
機能面での気になる点は、USB-DAC機能はスマホと接続して使えるのか、USB-DAC動作時は動画視聴に使える程度に遅延は少ないのかの2点でしょう。価格コムの口コミを見ると、Androidスマホとは接続してUSB-DACと使えるようです(全てのAndroidスマホ、端末で接続を保証できるわけではありませんが)、また、AndroidスマホからUSB DACモードで使ったときの遅延は動画鑑賞には違和感を感じる程度に遅い、というレポートも上がっています(これもPCと接続した場合の遅延は不明です)。