ティアックは、ステレオプリメインアンプ「AI-303」を、2023年2月に発売しました。直販価格は87,780円。
同社が展開するコンパクトコンポ「Reference 300シリーズ」の新モデル。2022年1月29日に52,800円で発売された「AI-301DA-Z」の後継機。
横幅215mmという小型筐体にデジタル系はHDMI入力、Bluetooth、光/同軸、USB入力を搭載し、ハイレゾ再生にも対応した多機能なDAC搭載型プリメインアンプ。アナログ入力はRCA2系統。サブウーファー出力も1系統搭載。
HDMI端子はARC/eARCやHDMI CECにも対応。いわゆるオーディオ用としてだけでなく、テレビ用のアンプとしての利用も狙っています。
DACチップはESSテクノロジーのES9018K2Mを搭載。USB-DACとしてはDSD 11.2MHzとPCM 384kHz/24bitまでのハイレゾ音源に対応。またUSB入力端子にはtype-Cを採用しており、PCだけでなくスマートホンやタブレットとも接続可能。USB-DACはアシンクロナスモード(非同期モード)で動作し、USB伝送ジッターを抑制。4種類の転送モードによる音質の変化を楽しめるUSB伝送技術「Bulk Pet」にも対応。
加えて、アップコンバート機能/MQAフルデコーターも搭載するほか、FIR/RDOTの2種類のデジタルフィルター、x2Fs、x4Fs、x8Fsのアップコンバート機能により音の違いが楽しめます。
Bluetooth 4.2準拠で、コーデックはLDAC、LHDC、aptX HD、aptX、AAC、SBCをサポート。
アンプ部は、Referenceシリーズでお馴染みの高効率かつハイパワーなHypex製Ncoreモジュールを採用(メーカーは具体的なモジュール型番は非公表・NC52MPと推測)。定格出力は25+25W(8Ω)、50+50W(4Ω)。
また4極ジャックを採用したグランドセパレート接続のヘッドホン出力も搭載。ヘッドホンアンプにはCoupling Capacitor Less Circuit(CCLC)方式を採用することで、コンデンサーによる音の変化や位相遅れ、低域のレベル低下といった音への影響を排除したとしています。ヘッドホン出力は220+220mW(32Ω)。
さらにヘッドホンリスニング時には、スピーカー再生時のような自然な定位感を得ることができるクロスフィード機能を搭載。効果はフロントに備えられた専用ノブから調整可能。
また抵抗ラダー型アッテネーターによるアナログボリューム、オリジナルの3点支持によるStress-less Footなど、これまでのシリーズで培われてきた音質のためのノウハウも投入。
消費電力は63W。外形寸法は215×257×61mm(幅×奥行き×高さ)、重さは3.3kg。
オーディオ用の小型プリメインアンプ(DAC入力を搭載し、D級パワーアンプを使っている)は、中国メーカーも含めて現在はいろいろあります。しかし、テレビ用のアンプとしても有用な、HDMI入力を備えたモデルはほとんどなく、その点だけでも大いに独自の存在価値があります(マルチチャンネルのAVアンプならいくらもありますが、大きすぎること、ステレオ再生用にはパワーアンプが多すぎることがネックになります)。
国内の大手オーディオメーカーで本格的な単品小型プリメインアンプを発売しているところもあまりありませんが(ミニコンポに準ずるクラスならありますが)、TEACはこの10年以上、小型コンポを開発・販売し続けており、その点でもノウハウの蓄積、完成度の高さも問題ありません。
ライバルとしてはBlueSound POWER NODEがありますが、国内メーカーではなく、価格も倍近くになります(約13万円)。
本機の購入者は、メーカーの想定どおり薄型テレビに組み合わせるアンプという人が多いようです。一方、従来からのPCなどのデジタル入力を受けての小型プリメインアンプとしてデスクトップも含めた使い方もあるようです。
ただ、デスクトップオーディオ用としては従来モデルの「AI-301DA-Z」が価格も安く(定価52,800円)、HDMI入力不要なら「AI-301DA-Z」でも良さそうなところで悩ましいところです。「AI-301DA-Z」は販売終了となってしまうようですが。
「AI-301DA-Z」はHDMI入力がないほか、DACチップがBurrBrown PCM1795、BluetoothコーデックはSBC、AAC、aptXに対応。パワーアンプ部にはデンマークICEpowerのD級アンプを搭載。出力は40W+40W(4Ω)といった違いがあります。
「AI-301DA-Z」については詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。
薄型テレビに組み合わせる小型のHDMIアンプがやはり本機の本領でしょうが、購入者などのレビューでは使用環境によってはHDMIのARC連動が不安定という声もあり、気になるところです。
もちろん先代モデルまでのPC接続メインのUSB-DACアンプとしての使い方にも適しているでしょう。
肝心のアンプとしての音質は、スッキリ、爽やかな傾向のようで、スケール感や重低音の迫力という方向性ではないようです。ただ、単品コンポならではの品位はさすがに備えているようです。