Noble Audioの新フラグシップイヤホン「Sultan」
エミライは、米・Noble Audioの「Sultan」を7月10日に発売します。オープン価格で、税抜き327,000円前後での実売が予想されます。
同社の新フラグシップイヤホンで、これまでのフラグシップである「Khan」(2019年に税抜き実売268,000円で発売)の上位モデルとなります。
「Sultan」の内容・特徴を「Khan」との違いも織り交ぜながらご紹介します。
「Sultan」は静電型を含めた異なるドライバーを7基組み合わせたハイブリッド型構成
「Sultan」は、超高域用に静電型を2基、中高音用にBA型を4基、低音用にダイナミック型1基という3種の異なるドライバーを7基組み合わせたハイブリッド型構成を採用。
「Khan」では超高域用にピエゾドライバーを1基使っていたのがドライバー構成面でのおもな違い
「Khan」では超高域用にピエゾドライバーを1基使っていたのがドライバー構成面での違いです。BA型以下の数は同じで合計6基のハイブリッド型でした。
「Sultan」は、超低域・低域を受け持つ10mm径ダイナミックドライバー、中音域・高音域を鳴らす4基のKnowles製BA型ユニットを内蔵。ダイナミック型の口径と、BA型ユニットのメーカーは「Khan」と同じです。使用ユニットが同じかまではわかりません。
低音の再生周波数が「Khan」の20Hzから「Sultan」では10Hzからと大幅に向上
スペック上では低音の再生周波数が「Khan」の20Hzから「Sultan」では10Hzからと大幅に向上しているので、少なくともダイナミック型ユニットに何等かの変更がなされている可能性は高いでしょう。
「Sultan」は、超高域用ドライバーにはSonion製静電型ドライバーをchあたり2基搭載。これにより、ピエゾドライバーを1基で25kHzまで止まりだった「Khan」よりも大幅に高域再生レンジを拡大。ハイレゾ対応要件を大きく超える70kHzの再生を達成しています。
クロスオーバーネットワークはいずれも4ウェイですが、内容については「Sultan」では一新されているようでう。
「Sultan」のスペックは再生周波数帯域は10Hz~70kHz、能率は115dB@1kHz、インピーダンスは16.5Ω@1kHz。
「Khan」の再生周波数帯域は20Hz~25kHz、能率は109dB@1kHz、インピーダンスは19Ω@1kHz。
ハウジングやフェイスプレートの違い
「Sultan」のハウジングはアルミニウムブロック素材から加工した新型のアルミニウムシェルを採用。高精度なCNC加工を使用して切削することで、独自の形状に仕上げています。
「Khan」ではハウジングは樹脂系と思われます。また、フェイスプレート部には、「M3コンポジット」という金属をベースにした最新の特殊混合素材が使われていました。フェイスプレート部にはシルバーとブラックの複雑な組み合わせによる模様が描かれていました。この模様は一台ごとに異なっています。
「Sultan」のフェイスプレートについては、「Khan」の「M3」のような特殊素材を使用したというアナウンスはありません。研磨、ラッカー塗装、ペアマッチングをハンドメイドで行ない、こちらも琥珀を思わせる美しい模様が一台一台違う様子で浮かび上がっています。
見た目はどちらも美しく、個性的ですが、パッと見た目での高級感や上質感は「Sultan」のほうがあるように感じられます。
ノズル・コネクター・付属ケーブル
ノズル部には、耐食性が高く長期の使用にも耐えるステンレス製フィルターを採用。おそらく基本的に「Khan」と同じもののようです。
イヤホン側のコネクターはいずれも2pin/0.78mm規格で着脱可能。「Sultan」の付属ケーブルはモノクリスタル・カッパー・ワイヤー(OCC)導体のケーブルを採用。音質だけでなく、耐久性の高さも謳っています。
「Khan」の付属ケーブルは「Khan」のために新たに選定されたという銀メッキ高純度銅導体のリッツ線を採用していました。
付属ケーブルについては優劣というより、それぞれのイヤホンに最適化されたケーブルがチューニングされているといったところでしょうか。
なお、「Sultan」にはNanuk 903防水ハードケースを付属しています。
どちらもハイエンドイヤホンであり、個性的なモデル
どちらも十分に高級・ハイエンドなイヤホンです。また、どちらも、超高域に高級イヤホンであっても、あまり一般的ではないドライバーを採用している挑戦的で個性的なイヤホンです。
たいてい、高級イヤホンはスマホや一般的なDAPではうまく鳴らすことが難しく、下手な環境ではイヤホンの持つ音質を引き出せないばかりか、満足に音量さえ取れない場合があります。その要因としては音質優先設計がもたらす、低能率と低インピーダンス、ないし高インピーダンスです。
とくに、高音側に一般的でないドライバーを採用したハイブリッド型のハイエンドイヤホンにその傾向が顕著です。
「Sultan」は「Khan」よりも鳴らしやすい?
実際、「Khan」でも、「能率が低くなっており、一般的なスマートフォン等では音量が取りにくい場合がございます。」「一部のUSB DAC内蔵ヘッドホンアダプターと組み合わせてお使いいただいた場合、アンプ部が「Khan」を駆動しきれずに音が割れる・歪む、またはノイズを出すことがございます。」との注意書きが製品ページにあります。
このような趣味性の高い高価なイヤホンをスマホで使おうというほうが悪い、という向きもあるようですが、意外と高級イヤホンをスマホやリーズナブルなDAP、DACに接続して使うユーザーはいるようで、そのような背景があるからこそのメーカーからの注意喚起と思われます。
一方、「Sultan」ではどうでしょうか。静電型ドライバーというと、これまた一般的に駆動が難しく、それどころか、普通のヘッドホンアンプではまともに駆動さえできないため、専用のアンプを用意するのが普通です。
ところが、本機では専用の昇圧用トランスを搭載することで、従来のイヤホン・ヘッドホン用のアンプ回路でもドライバーを駆動することが可能になっているとしています。それだけでなく、「Khan」のような注意書きもありません。スマホや一般的なDAP、DACでも実用レベルで使用できるということのようです(最大限の音質を引き出せるかは別問題ですが)。
「Sultan」が実際にどのように幅広い環境で鳴らせるのかについても注目されます(イヤホン+Noble Audio)。
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