TEAC VRDS-25Xs 1998年ごろに23万円で発売されたCDプレーヤー
生産終了機器情報。TEAC VRDS-25Xsは1998年ごろに税別23万円で発売されたCDプレーヤー。
TEACお得意のVRDS(Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System)メカニズムを搭載したCD読み取り機構を搭載しているのが特徴。
また、シャーシ構造にフルボディード・コンストラクションを採用しているのも大きな特徴。CDプレーヤーでは一般的なフローティング構造(ある程度振動を吸収できる構造にすることで、外部振動による読み取り不良を減らして安定した再生を行えるため)をあえて採らずに、振動を跳ね返すようなリジッドな構造になっています。
そのため、シャーシに8mm厚8kgスチールボード・ボトムシャーシとアルミ無垢ブロックを採用した超高剛性シャーシを構成。脚部に重量級鋳鉄製ピンポイント・インシュレーターを採用。本体全体で23kgの重量も相まって、強固なシャーシを形成しています。
機能面ではアナログ・バランス出力の装備、デジタル入力の装備によるDAC単独使用可能、デジタルボリュームによる可変アナログ出力など、当時としては結構多機能です。リモコンはありますが、ヘッドホン出力はありません。
DACチップは20bit精度のものを採用。DSRLL(デジタル・サーボ・レシオ・ロックド・ループ)サーキットや、ディストーション・シェイパーZDIIといった当時のTEAC/ESOTERICが採用していたデジタル技術も投入されています。
※TEACお得意のVRDS(Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System)メカニズム
TEACのVRDSメカニズムは、CDプレーヤーなどの光学式ディスク再生機器に採用されている、高精度なディスク回転システムです。1987年に開発。
このメカニズムは、ディスクを回転させるときに発生する振動や不安定な回転を抑えることで、高精度かつ安定した再生を実現しています。具体的には、ディスクを取り付けるトレイを、磁気式のロック機構で固定することでディスクに対して安定した圧力をかけ、振動を抑制しています。また、トレイを回転させるためのモーターも、振動を抑えるためにバランスをとり、低ノイズ・低振動で高速回転を実現しています。
このように、TEACのVRDSメカニズムは、高精度な再生を実現するために、ディスク回転における振動や不安定さを抑える技術です。
TEACのVRDSメカニズムはとくにその音質面での優秀さから、海外の高級オーディオメーカーが自社製CDプレーヤーのメカニズムとして採用するなど一時は高級CDプレーヤーのドライブメカの代名詞になっていました。
2000年代にはいるとCDだけでなくSACDにも対応したVRDSメカも開発されました。ただ、高級オーディオ業界の縮小、そもそもディスクメディア再生が縮小し、ハイレゾなどのデータ再生に移行するなどもあり、近年はTEACのVRDSメカニズムの影は往時よりも薄くなっています。
オーディオ評論家の長岡鉄男が生涯最後に使っていたCDプレーヤー
オーディオ評論家の長岡鉄男(1926-2000)が生涯最後に使っていたCDプレーヤーとしてオーディオ愛好家の間では知られています。この事実だけで本機のサウンド傾向がいわゆるハードでシャープでダイナミックといった、長岡鉄男が好む・評価する方向の音であることがわかります。当時は長岡鉄男のオーディオ業界に対する影響力は大きく、彼の評価する音調に多くのオーディオ愛好家が追随していたと言われています。
また、長岡鉄男のようなプロのオーディオ評論家がシステムに組み込むコンポとしては異例に安いこともポイントです。つまり本機は当時のオーディオ業界で高く評価される音質を備えていたうえ、大変にコストパフォーマンスが高いという特筆できるCDプレーヤーだったと言えそうです。
本機の先代モデル・TEAC VRDS-25X、本機の後継機に当たるTEAC VRDS-50やESOTERIC X-25のいずれもが、本機ほど評価されていないこともあり、本機の孤高の存在感は異彩を放っています。
TEAC VRDS-25Xs レビューサイト
TEAC VRDS-25Xs 修理情報
特徴的な音質と構造により、CDプレーヤーの名機として評価
本機の音質は上述のようにハードでシャープでダイナミックといった、長岡鉄男が好む・評価する方向の音であることは間違いないようです。音場より音像、繊細さより力感といった方向性で、しかし、リアルさや生々しさを結果的には実現しているという高度な再現性を有しているようです。
今日ではハイレゾ音源やDSD音源の普及により、自然で滑らかなサウンドが志向されている印象なので、今では一層の異彩を感じさせそうです。
本機の後継機に当たるTEAC VRDS-50やESOTERIC X-25では本機の鮮烈とも言える迫真的なサウンドとはかなり異なり、穏やかな傾向と言われ、本機を好むユーザーからは評価されませんでした。
それなりの使いこなしを要求
本機は、フローティング構造の排除により、設置などの使いこなしを要求するとも言われてきました。つまり、安定したラックに置く必要があります。これだけでも単品コンポの初心者には面倒です。
また、本機には専用インシュレーターが本体底に装備されているのと、スパイク受けが付属しています。オーディオ愛好家は機器に備え付けられているインシュレーターを交換して音質変化を楽しむことがありますが、本機のインシュレーターは、一般的な汎用インシュレーターとは異なるネジ切りによっているため、汎用インシュレーターの交換にも自分でネジ切り加工をするなどの苦労が必要です。
著名な名機であり中古購入は現在も可能なほう
オーディオ業界では有名なモデルなので、今でも中古が流通しています。しかし、発売からかなり時間が経っており、メーカー自身も「修理のご相談を頂戴するも、部品調達が困難なため必要部品が揃わず、やむを得ずお断りする事がございました。」とホームページで言っています。それでも、名機と言われるモデルだけに、中古オーディオショップなどがどうにかして直して・オーバーホールしてでも販売・流通は続いているようです。中古は2023年のいまでも買おうと思えば買えるようです。もしCDプレーヤー部が壊れても、DAC部は使えるでしょうから、簡単にゴミにもなりません。もっとも、本機の価値はCDトランスポート部にあるという見方が大半ですから、CD読み取りができることは重要でしょうが。
ヤフオクでの中古相場はCD動作品で12万円から14万円程度。CD読み取り不良のDAC動作品でも8万円程度はするようです。
CD専用VRDSメカ搭載機が20年ぶりに2023年に発売され、再び本機にも注目が?
CD専用のVRDSメカは、SACDの登場後は、SACD対応VRDSに置き換わりました。CD専用のVRDSメカなど時代遅れになった…と思いきや、2023年の4月15日、CD専用のVRDSメカを搭載したCDプレーヤー「VRDS-701」が発売(382,800円)。
CD専用のVRDSメカは2003年発売の「VRDS-15」が最後だったので、実に20年ぶりにCD専用のVRDSメカ搭載機が復活。SACDが普及しなかった一方、ハイレゾ音源はUSB入力で対応できることから、ディスクはCDのみというCDプレーヤーの原点に戻ることになったようです。
「VRDS-701」の発売により、CD専用のVRDSメカを搭載したCDプレーヤーの名機「VRDS-25Xs」にも再び注目が集まっています。ネット上では「VRDS-701」と「VRDS-25Xs」の音質の違いについて興味が持たれるなど、思いがけず「VRDS-25Xs」の存在がクローズアップされています。
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